が、どんよりと低くたれ込めた鉛色の空に向かって突き刺すように
そびえ立っているのが見え、その塔頭の後ろに、こじんまりとま
とまった七堂伽藍の鼠色の甍の波が、青々とした背の高い松や檜、
うっそうとした孟宗竹の一群に囲まれて、ひっそりと重なり合って
いた。その寺の周りを、黄土色の丈の高い土塀がそこで外部の世界
を遮断するかのように取り囲んでいた。
寺の向こう側には、雑木林に囲まれるようにして小さな畑が見え、
きれいに耕された焦げ茶色の土が整然と畝を作って並んでいた。雑
木林の向こうには、その先の低いなだらかな山のすそ野にかけて、
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に駆け下りて行った。狐から少し遅れて、しなやかな体つきの真っ
黒い犬が、ワンワン、ワンワンと激しく吠えたてながら長い足で猛
烈に地面を蹴って狐を追いかけていた。その犬のまた少し後から、
焦げ茶色のふさふさとした毛でできた暖かそうなチョッキを身にま
とい、耳まですっぽりと覆う黒っぽい厚手の革の帽子を被った猟師
が、重そうながっしりとした黒い猟銃を手にして、腰を少し落とし
ながら慣れた足取りで、犬の後を追うようにして急いで山を下って
行った。
山の麓には、この地方きっての名刹と評判の高い松雲寺の塔頭
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