生れてすぐに母を亡くしたリョウは、七つの時、村外れに住む普賢老人から、人間の言葉を話せ人の心が分かるという、不思議な白牛の話を聞く。 その話は、遥かに遠い高い山が連なる麓の土地で言い伝えられている話で、実際にいるかどうかは定かではないという。
　リョウは、この話は本当の話だと確信し、十三歳になった時、今は亡き普賢老人が飼っていた犬のコロを連れ、白牛を探しに遠い異国の地へと旅に出る。 [本文の冒頭部分を読む]

　少年期を過ごした町ウィーン。再び訪れた僕は、そこで自己を発見し、新しい人生へと旅立った……。
　一人の青年が、ウィーンでドイツ語を学びながら、様々な国から来た人々との交流を通して視野を広げ、生きる道を見つけるまでを描いた夏の一か月間の物語。 [本文の抜粋を読む]

　禅寺、松雲寺の高僧香山和尚は、十二月上旬、毎年恒例の法話を八日間程、法堂で行っている。 和尚は、一番後ろの隅でその法話を聞いている、見知らぬ老僧の姿が気になり、ある日、法話の後、その老僧に声をかけ、 自分の方丈に招き入れる。老僧は、香山和尚に驚くべき自分の身の上話をする。…… [本文の冒頭部分を読む]

　出家して間もない黄檗は、人づてに、一人暮らしをしている母が、近頃目が悪くなりほとんど見えなくなったようだ、と知らされる。 母が心配な黄檗は、禅の掟を破り、自分であることを悟られないように、偽名で母のもとを時々訪れる。 ある日、そうして母を訪れた直後、隣人に正体を見破られてしまう。…… [本文の冒頭部分を読む]

　達磨、香厳、い山、徳山の四人の禅僧の逸話を紹介しています。
　達磨は禅宗の開祖で、仏教の真理を伝えるために、インドから中国に渡りました。そして、梁の武帝と会見し、「不識」という有名な言葉を残して武帝のもとを去りました。
　香厳は、小石が竹に当たった音を聞き悟った、「香厳撃竹」の話が有名です。その他、その香厳の師である、い山の話、また、悟った時に、それまで持ち歩いていた金剛経をすべて捨てた徳山の話を紹介しています。 [達磨の冒頭部分を読む](い山の「い」はさんずいに為です。)